「看護教育にも活用」患者の精神的ケア補う
イタコの口寄せは、現代医療でカバーし切れない患者の精神的ケアの一部を補っている--。県立保健大学健康科学部の藤井博英教授(精神保険学)らの研究の結果、本県に伝わるイタコなどのシャーマニズム(心霊、宗教)文化と病気、患者とのかかわりが明らかになってきた。藤井教授は、研究から現代に欠けているものをくみ取り、看護教育の現場でも生かしたいとしている。
研究は2000年から継続して行い、06年に報告書としてまとめた。県南地方の三つの総合病院に三ヶ月以上通う慢性疾患(骨・関節疾患、高血圧、糖尿病、心臓疾患など)の患者670人を対象に聞き取り調査を行い、その結果を分析した。
34%が相談経験
患者のうち、イタコやカミサマなどに相談したことがあるのは34.6%(232人)。その性別は男性17.2%(40人)、女性82.8%(192人)だった。
相談内容(複数回答)は、
1自分の病気(40.5%)
2家族の病気(24.1%)
3家族の問題(17.2%)
など。相談した理由(複数回答)は、
1心が癒される(26.7%)
2早く病気を治したい(26.3%)
3苦悩・苦痛から逃れたい(22.4%)
などだった。
また、相談した後は
1とても心が癒された(29.7%)
2話を聞いてもらい落ち着いた(27.2%)
3別に変わりなかった(20.7%)
だった。
調査の結果、慢性疾患の患者は、医学的な効果を望んでいるのではなく、時間をかけて話を聞いてもらうことで「癒される」傾向にあることが分かった。
悩み聞く受け皿
藤井教授は「慢性疾患の患者は長期間、病気と向き合っていかなければならないことから、イタコなどが心理的苦痛、悩みを聞いてくれる受け皿の役割を果たしている」と話す。
藤井教授は結果を基に「現代医療に欠けている部分をくみ取り、現場に反映させたい。癒しのプロセスを分析し、今後も医療とイタコなどの地域のシャーマニズム文化が補完し合えるようにしていきたい」と話している。
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