アマゾンの「ヘッドホン」カテゴリをボーッと眺めていたら、売れてる順番で7位に入っていたので驚いた。このヘッドホンは、わしが東京に来る前から何度も使い潰してきたもので、少なくとも10年強のロングセラーということになる。流行廃れの多いこのポータブルオーディオの世界で、10年間にわたり支持されてきたというのは、やはり自分だけでなく隠れファンがけっこう多いのだなとうれくなった。
自宅ではSTAX、AKGなどを使い分けていますが、通勤・旅行用、そして入院中はずっとこの「MDR-ED31LP」一本です。
「MDR-ED31LP」は、通常のインナーイヤー型とカナル(耳栓)型ハイブリットデザインのパイオニアともいえる画期的もので(当時、類似商品はまったくなかった)、先端は耳の奥にむけてしだいに細くなっており、耳孔からはみ出す部分で筐体に容量をもたせている。ホーン型スピーカーとちょうど逆なのだが、これが「ベースチップ」といってなぜか低音がよく共鳴する。
iPod人気でインナーイヤータイプはいまや海外ぐるみで百花繚乱、このタイプは珍しくありませんが、「MDR-ED31LP」はiPodどころかMacがまだ漢字Talk7のころからすでにこのサウンドデザインを貫いてきました。この構造はソニーご自慢の新作「N・U・D・E EX」 MDR-EX90SL にも継承されているように思う(音質はまったく別傾向)。
いちどモデルチェンジしてさらに音が磨かれたとき、つい興奮してしまい、メーカーへ返送するアンケートを利用して担当開発者に最大級の讃辞を送ったことも懐かしい。2,500円というゼネラル・オーディオ宿命の厳しい価格帯でこのようなアイデアと商品化がなされていたということはもっと知られてよい。
●いいところ
耳栓状なので遮音性が高い。抜けにくい。音漏れがかなり小さい。
低音は自然なブーストで、EQみたいに露骨な強調がない
高音はキンキンいわず聴き疲れがない
●わるいところ
形が形だけに耳に入らない人がどうしても出る
音の透明度、分解能、レンジ感は他のリファレンスヘッドホンに負け負け
抜けにくい分だけ、コードの寿命は短い(引っ張ったり、ひっかかったり)。
なぜ10年前、これがいたく気に入ったかというと、当時のCDはまだマスタリングの技術が今より未熟で、音質の悪いソースがいっぱい出回っていたからです。ちかごろの再発リマスター盤を聴いていると、CDというフォーマット自体は悪くなく、マスタリングの技術・機材がまだ手探り状態だったとハッキリわかる。オリジナル音源がもつ豊富な倍音成分がかなり間引かれてしまい、クリアーなサウンドだといえば聞こえはいいけど、結果的に音がキンキンキラキラしていたからです。だから音量を上げたくても高音がうるさくなるのであきらめる、という状態が続いていました。
それを「MDR-ED31LP」はうまく音響的にイコライジングしてくれたんですよね。耳に心地よく響くように。失われた倍音が復活したかのように。一言でいうとファットな音なんですよ。音が太くなる。ファンクになる。何時間でも聴ける音になる。レコードというか、カセットテープで聴いてるような、生理的にスッと受け入れてしまう音に変わる。これはダイナミックレンジがどうとかじゃなくて、単純にキモチいいんですよ。
2000年代になって、SACD(次世代のCD)のフォーマットであるDSDマスタリングのCDをはじめてきいたとき、「ああ、これでMDR-ED31LPはいらなくなるなあ」と思いました。失われたものがちゃんとそこにはあったからです。まるでアナログできいてるかのようなふくよかさ。それでいてシャープな解像度。でもいまだに世のCDはすべてDSDになっておりませんし、むしろiTunes Storeでいいじゃん!という有様。
結局また「MDR-ED31LP」買っちゃいました。
SONY インナーヘッドホン [MDR-ED31LP]





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