ステロイドが70mgも入った状態で「たまには外泊したい」と先生にアッケラカンと言ってみせたある患者。70mgというのは私からみても常軌を逸した分量である。エイズ患者のように、免疫力をはぎ取られたような状態だ。それだけヤバいGVHDが出たということだろう。
先生はさぞかしハラハラしどおしだったのだろうが、ご本人は死線をくぐってきた自覚はまったくないらしい。でなければこんな悠長な台詞がでてくるはずがない。
この一言をきいて先生が激怒したことがわかった。とはいっても表だって怒りをあらわしたりはしない。「はっきりいって不愉快」という言葉を要所に織り込みながら、いま外泊することがいかに危険なことかを丁寧に説得しはじめた。とうぜん了承したものと思っていたら、今度は「様子をみてみます」だと。様子見っていうより、絶対ダメだってことがまだわからないらしい。
しばしの沈黙のあと、やはり同じような時期にたった一回外泊を強行したのが仇になり、肺炎になって死んだ人の例を先生はもちだした。
「自分の意志で決めたことだから、それはしょうがないといえばそうだけど、こっちとしてはここまで来たのになんで?っていうのがあるんだ」
そうそう。せっかく骨髄移植までして繋いだ命なんだから。やめといたほうがいいって。
「感染による肺炎が引き金となってGVHDを併発すれば、生存率が半分どころでなく、3〜4割になってしまう。わざわざ肺炎のリスクを冒してまでどうしても行かなくちゃならないのか」
え? それって今のオレの状態では? わかってなかったのはオレ自身か?




コメントする