どんな言葉も届かない闇の中にいた
「がんばって」という言葉が何より辛かった
わたしはこんなにがんばってきた
ずっと闘いつづけてきた。
これ以上なにを
がんばれっていうの
そんなときにきみが逝った
退院したら一緒にディズニーランドに行こう
ミッキーとミニーの帽子をかぶって
プーさんのかたちのワッフルを食べよう
きっといつかすべて終わり
「今となってはいい思い出だよね」って
笑って言える日が来るよ
だからどっちが先に退院しても
ちゃんと待ってること
約束だよ
空になった病室が
わたしの胸の空洞に
あの朝すっぽり
おさまってしまったから
この体にセットされた
時限爆弾の音を
あの朝はっきり
聞いてしまったから
わたしを本気でがんばらせてくれたのは
「がんばろう」とすら言わなかったきみ
わたしを一生がんばらせつづけるのは
もう一生会うことのないきみ
いのちに火をつけられるのは
愛、なんかでは
ないのかもしれない
吉沢 翠『いまを翔けぬけろ 27歳の骨髄移植 』新風舎





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