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「ジャズとは何か」抜き書き06


「チャイナ・ボーイ」
(ベニー・グッドマン・トリオ)

坂本:左手がすごいね。

山下:このときの左手の十度の連続。これをもう日本人が全員悩むんですね。

テディ・ウィルソンの日本への紹介者の秋満義孝さんも何かのインタビューで言ってましたね。十度を連続していくからあのサウンドがでるのであって、とういてそれができないので、それを六度で代用するんだよ。ドミをミドに(笑)

大谷:下に持ってきちゃう(笑)。

山下:クラッシックでも十度はね、みんな苦労するところなんだけど、それがこういうところにもあるんですよね。

坂本:うーん、すごくいい響きだねー。

大谷:これベースがいないんですよ。テディ・ウィルソンが全部できちゃうからっていう。ジーン・クルーパのバス・ドラムと彼の左手だけでぜんぜんビートがきくっていう。このあたりが30年代の真ん中ぐらいで、ここらへんから、こういった形でのビートが効いているのを白人が表にたってどんどんやるようになっていくという時代ですね。

坂本:もう踊っているのも白人?

大谷:踊っているのも白人です。オール・アメリカン・ミュージックという形になってきて、これこそがわれわれの音楽だ、アメリカのミュージックだっていう。

山下:ベニー・グッドマンという白人のスターが出たおかげですよね、それとラジオの普及で全国に広まった。

大谷:この人が初めてメジャーでは、自分のバンドに黒人を入れた人なんです。テディ・ウィルソンはブラック・ミュージシャンで、この後ライオネル・ハンプトンってヴァイヴラフォンが入るんですけど、最初は絶対やめろってみんなに言われたみたいですね。

坂本:白人だけでやってたわけですか?その前は。

大谷:そうです。カラーは分けないとダメだったんです。どの場でも、基本的に。

坂本:黒人が入るのがいつごろですか?

大谷:ここですね、35年ですね。ここで初めてですね、こういうラジオとかにも出るのって。ラジオだと顔が見えないんで(笑)、本当そうらしいんですよ。レコードとかラジオだとミクスドはあったらしんですけど、それで全国まわるっていう、ステージにのるっていうのは...

坂本:舞台に出ちゃいけないんだ、なるほどね。

山下:黒人バンドは黒人バンドでもちろんあったんだよね。

大谷:デューク・エリントン、キャブ・キャロウェイ、カウント・ベイシーも...いっしょにやっちゃダメっていうことが...でもここではじめていっしょにやれて、しかもそれがアメリカ全国的にヒットして認められたというので、のちのスイング時代のシロクロ混合でも大丈夫だし、それこそむしろアメリカだという...

坂本:じゃあそれまではアフロ・アメリカンの音楽だったのが、そこで初めてアメリカの音楽という風に認知されたと、いう感じですかね。

大谷:そうですね、それまででもジャズといわれてたものは、やっぱり一段低いというか、本当、酒場のガチャガチャした...

坂本:まあジャズという言葉自体がそういうニュアンスだよね。

大谷:ちがう音楽だと思われたらしいんですよジャズとは。スイング・ミュージックだと呼ばれてたらしいですよ。

坂本:ちょっと高級な。

大谷:ちょっと高級な、ジャズっていう言葉はアウトで、これはスイングだ、新しく白人が発明した音楽だ、という風にみんなは思ったらしいんですよ。

坂本:ああ、ズルイなー。ぼくもね、もう20年くらい前ですけど、アメリカのレコード会社と契約してね、アルバム作ったのね、そんなかのひとつの曲に、まあジャズっていう言葉を使ったわけ。そしたらねその白人の、80年代ですよ、現代の話ですよ(笑)、ジャズって言葉は使わない方がいいって言われましたよ。まあそれほど説得力のある言葉っていうかね、生きてるんだねジャズっていうのは。やっぱりネガティヴなイメージがあるみたいですよ。一般の人には...

山下:なるほど、ちょっと狭い世界だっていう。

坂本:ごちゃごちゃした汚いみたいな。そういう最初の語感がまだ残ってるんだなーと思って、新鮮だったんだけど僕にとってはね。英語で言うと「nasty」(笑)。汚いかんじ。

大谷:それがこのユダヤ系アメリカ人が表に出ることによってクリーンですごい...

坂本:インテリジェントな(笑)

大谷:しかもハッピーでヘルシーな。

坂本:プラス思考でね。

大谷:しかも、このビッグバンドになってゴージャスになってという、アレンジもきれいなんで、そんなごちゃごちゃした、たとえばディキシーとかはラインが動いていくから、捕まえにくいっていうか。

坂本:白人が理解できない(笑)

大谷:理解できない。何かガチャガチャやっているっていう風なのはスッキリさせて、きれいにブラスとリードで...パラー♪パラララー♪って。

坂本:あれだったらわかるわけだ。

大谷:というのがだいたいこの時期から。それがアメリカで大受けしたというのがモダンジャズ前史っていうか、まあ歴史的に言うと。

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