根源からお金を問う 05「エンデの父」

エンデは画家であった父、エドガー・エンデ(Edgar Ende)と深く結ばれています。...エドガーは戦前、ナチスによって反社会的で退廃的とレッテルを貼られ、絵の製作を禁止されました。その期間は、エンデが6歳から16歳までの10年間にあたり、父は息子エンデと濃密な時間を過ごし、その思想と芸術を息子にそそぎこみました。

父は「スケッチにいくからね」といい、アトリエに閉じこもりました。部屋を真っ暗にしてソファーに身を横たえ、ある「像」が意識のなかにやってくるのを待つのです。得られたイメージは小さなカードにスケッチされて、時がくるまで放置されます。一つの作品が結晶するまでには長い長いプロセスが必要でした。

こうした父の創作の一部始終に立ち会ってきたエンデは、目に見える現実や現象の奥には別の実在があるのだと素直に感じたでしょう。

しかし、当時はエドガーの作品は時代の主流から遠く、理解困難で注目されるものではありませんでした。

父は、幼いエンデに、何事にも驚く心も教えました。散歩するといつも、奇妙なものを見つけてはエンデに示しました。雪が降った朝には、彫造が雪帽子をかぶっているのを指さし、「見てごらん、なんて不思議なんだ」と叫びます。

エンデの思い出のなかでは、エドガーはどんな些細なことにも感動し、驚く人でした。驚きは人間のなかにある永遠の子どもらしさ、創造の泉です。

エドガーからエンデに伝えられた精神の柱は、自明とされることを自明のものとしないで、目に見えるものの背後に思いを凝らす姿勢でした。

そのエンデが、最後まで自明とすることなく問い続けたのが「お金」でした。

エンデの遺言 根源からお金を問うこと  』 2000 NHK出版 P18-19

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