福岡県宮若市の有吉病院の看護師、福本京子(49)は96年のある日、院長の有吉通泰(みちやす)から「研修にいってきて」といわれ、半信半疑で田中のもとへ。
お年寄りの表情がみんな穏やかなのに驚く。その日、福本は若草色のワンピース。認知症の70代の女性が「すてきね。希望にもえる色だわ」と声をかけてくれた。
それまでこんな会話をしたことがなかった。私は何をしていたんだろう。認知症だからと、どこか見下していた...。涙が出た。
福岡に戻った福本は、仲間とケアを一つひとつ見直す。
「そうしたら、10年ぶりに1人で食べられるようになった患者さんがいたんです。ずっと、1人では食べられないと思って介助してきたのに。なんて申し訳ないことをしてきたのか」
介護保険スタートを前に有吉は考えていた。「患者さんが病院を選ぶ時代がくる。生き残るには、選ばれる病院にならんと」。97年、福岡県内の老人病院の研究会に吉岡と田中を招いた。体験談は出席者の胸を打つ。やってみれば自分たちにもできる!
98年、有吉たちの10の病院は「抑制廃止福岡宣言」を出す。縛らないケアへのうねりのなかで99年、国も介護保険施設で縛ることを禁じる。
いま田中は岡山県倉敷市の病院の看護部長。二十数年前、「できっこない」「ばかなことをいうな」と変人扱いされた。それでもへこたれずに問いかけ続けてきた。
「『患者さんのため』『仕方がない』といって縛ってきたのは私たち。それは思いこみ。そこから解き放たれてこそ、本当の看護が始まるんです」(生井久美子)
(続く)
「ニッポン 人・脈・記 みんな、その日まで8 縛らない老いの体と心」朝日新聞 朝刊 2008.3.18




これも
「花は紅、柳は緑
いやいや、花は紅に非ず、柳は緑に非ず
ご用心、ご用心」
ですかね?
いやいや、そこまでの含みはござらぬのだ、ごっつ殿。