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四十九日の花火

J師匠、見えますか、今夜は花火が綺麗です

師匠とはじめてお会いしたのは、ちょうど三年前、病院のお風呂のなかでした。抗がん剤の治療中だというのに、点滴をつけたまま体を洗っていたのには驚きましたよ。そして「点滴のチューブはこうして肩にかけると濡れないんだ」と教えてくれたのです。すごい人がいるものだなあとぼくは感服しました

骨髄移植をやるかどうか迷っていたぼくを一喝したのも師匠でした。「数パーセントでも可能性があるならば、挑戦しないでどうするんだ」そんなのアタリマエだといわんばかりに険しくお叱りくださり、ご自分もその言葉どおり、あえて困難な道のりを歩まれたのです


治療方針や薬の処方のことで納得できないことがあると熱心に医師や看護師にたずねていましたね。「うるさい患者」を自称し、ご家族からは「血液型といっしょに性格も変わったらいいのに」なんて言われてお互い苦笑いしましたね。ぼくも家族からおなじこといわれていたから。採血データから折れ線グラフを作成し、自慢げに披露してくれたりと、あなたの考究心には医師でさえ脱帽していたとおもいます

無菌室でもあなたはなんと、テレビ端子を独力で発見し、PCにつないで録画したりと創意工夫を楽しんでおられました。前処置で抗がん剤がガッツリ入っているときも、あのマズイ飯を完食したりと、みんなでタフぶりを噂していたものでした

移植後、ベッドを並べてお隣さん同士になったときは楽しかった。あなたはとにかく世話好きで誰彼となく患者どうしの縁をとりもっていました。自分の殻に閉じこもりがちな患者たちのカーテンをとっぱらってくれたのです。だからあなたのいる病室はいつも陽が射していました

ぼくより後に移植したのに、ぼくよりずっと先に退院しちゃって、あのときは悔しかったなあ。でも病院に来られたときはかならず寄ってくださいましたね。定年になったらやりたいと話していたこと、病気のせいでできなかったことをひとつずつ実現していく毎日、生の喜びをかみしめる姿を拝見し、ぼくも達成感をおすそわけしてもらいました

だから「舵を切った」と、あなたの口から聞くのは辛かった。何も言えなかった。せいぜい通院のたびにお顔を拝見することぐらいしかできなかった。いつか来る別れのことを考えないように、自分をごまかすしかなかった

今宵の花火は師匠、あなたの仕業でしょう。人を楽しませることが大好きだったあなたらしい。

大太鼓のように打ち響く花火音は、師匠の気合いですか。後悔ばっかりでくよくよしているぼくを一喝するあなたの声ですか

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