セックス依存症 −その理解と回復・援助

October 19, 2004

2449.gifセックス依存症—その理解と回復・援助  
パトリック・カーンズ=著 内田恒久=訳
2004年3月29日
4,200円(税込)
A5上製 274頁
ISBN4-8058-2449-2

「人類の歴史においてセックスへのこだわりを私たちのようにもったのは、ローマの社会が唯一つの前例なのです。.....ゴート人が城壁の外に達したときにローマの人びとは、その不安から逃れるためにマスターベーションにふけったといわれます。というのは、セックスは、不安を解消する非常に効果的な解毒剤だからなのです。性的な刺激を伝える神経経路は、不安を伝える神経経路を遮断してしまうのです。現代社会には私たちが解決することのできない無数の問題がありますから、現代人がセックスへのこだわりに向かうのは理解できることなのです。しかし私たちは、現代の異常な状態から抜け出せるような論理を作ることを避けてはなりません。」ロロ・メイ著『自由と運命』P299 誠信書房より

性欲というのは本能的なもので、自らの意志ではどうしようもない生理現象であるというのが一般的な通念であろう。よってマスターベーションは当然ながら、それに対する消火作業だと正当化されてきた。しかしロロ・メイの指摘にもあるとおり、性欲の源となっているのは、実は「不安」なのである。自分の心に空虚さ、憂鬱さを感じるとき、人は恋愛やセックスを単に神経経路を遮断するための自家製薬物として常用するのである。

となるとセックスにも、麻薬やアルコールと同じく常習の危険性がつねに存在するから、とうぜん依存症に苦しむ人びとも出てきておかしくはない。さらにアルコール依存よりやっかいなのは、常に相手を必要とするという点である。酒瓶を棚に陳列しておくように、性的対象を常時ストックしておくというわけにはいかない。そのつど自分で用立てなくてはならないであろう。常習者はより強い刺激を求めて風俗やポルノ、ナンパから、のぞき、下着ドロ、レイプなどの性犯罪へとエスカレートしていく。社会的にも高い地位にある高学歴高収入のエリートが、のぞきで逮捕されたなどの事件をみなさんもよくご存じであろう。これは単にスケベだというよりもう立派に病気なのであり、周囲の励ましと治療が絶対に必要なのである。

アルコール依存については、我が国でもさまざまな支援団体が存在し、確かな成果をあげているが、セックス依存についてはまだ社会的認知が一般化していないのが現状である。悩みをかかえている人は相談するにも羞恥心もあってなかなか家族にさえ打ち明けることもできず、より孤独と不安を強め、結果としてさらに症状が悪化するという悪循環が生じている。

ネットで調べてみると、まだ少数ながら自助グループが活動を開始しているようだ。たとえばSCA東京グループは世田谷区を拠点としており、毎週金曜日にミーティングを実施している。彼らのサイトを読んでいただければ、セックス依存症の概要がかなり明確につかめるであろう。とくに「私たちのほとんどが共通に持つと思われる特徴」には身に覚えのある方も多いはずだ。

最後に、パトリック・カーンズの『セックス依存症』についてであるが、我が国ではなかなか類書をみない分野の仕事であり、内容的には申し分ないのであるが、いかんせん訳がひどすぎる。まるでパソコンの自動翻訳ソフトそのままといった体で、日本語になっていない。学者というのは、専門知識はあっても、文章がうまいという保証はない。ここはやはり編集者がリライトするなり、ゴーストライターをたてるなりしたほうがよいのではないか。ついでに不満をぶちまけるとロロ・メイの『失われし自己を求めて』(誠信書房)の訳も最悪だ。何を書いているのか理解するのに3度ほど精読しなくてはならない。これで改訳版だというのだから恐れ入る。原語で読もうと思ったらすでに絶版。八方ふさがりである。

ついつい関係のない愚痴になってしまったが、ぜひ「セックス依存症」に関心を持っていただきたい。

Posted by nara at October 19, 2004 3:04 PM | トラックバック
コメント

昔、セックス依存だったので、治った今になって自分がどんな状況だったのか詳しく知りたくなりだして、読もうと思ってたんですが訳がひどすぎるとは。。

Posted by: あき at August 3, 2005 10:29 AM

あきさん。の様に程度によってはカウンセラー等をうけなくても直るのでしょうか?
もし、疑わしい時は、どこに行って治療したらいいのでしょうか?薬等もあるのでしょうか?

Posted by: tomonori at April 2, 2007 4:17 PM
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