私どもが製作したキャシーの映画を見たことのある人がいますか? 全身麻痺で車椅子に乗っているお年寄りがダンスをするという映画です。
老人の手助けをする方法について、私どもは映画を製作したのです。そのとき対象にしたのは私たちと同じ六十代の老人ではなくて(笑い)、もっとずっと高齢の人たちでした。医療付き老人ホームで、麻痺のために車椅子生活を余儀なくされている八十歳から百四歳までの男女を選びました。元気もなければ頼る人もいないという典型的な高齢者の人たちに生きる方法を教えようというのです。
キャシーという名のダンス講師がダンスを教えるのですが、お話したように、老人たちは全身麻痺で車椅子に乗っています。キャシーはみんなの車椅子を円形に並べました。
普通ならカメラマンは、カメラに向かってニコニコと、楽しそうに、いい顔を見せようとしているお年寄りの姿を撮るところでしょう。ところがこれを撮ったカメラマンは、そうしませんでした。何と後ろから、ダラリとたれているお年寄りの足だけを撮影したのです。
ところが、チャイコフスキーやモーツァルトなどのクラシック音楽がかかってダンスがはじまると、なえた足が突然動きはじめたのです(聴衆から驚きの声)。それから、信じられますか? 老人たちは本当にのってきました。ひとりのおじいさんは飛び上がって車椅子をガタガタ鳴らして動きまわり、お隣のおばあさんをつかまえては、さわりはじめました(笑い)。いろいろなことが起こりましたが、一部始終を映画で見ることができます。
そのおじいさんはお隣にいたおばあさんと、あとで婚約したんですよ(楽しげな笑い)。もちろんおばあさんも花嫁になることを承知しましたが、どうも、花嫁になりたかったのは新しいドレスがほしかったからのようです!
E・キューブラー・ロス 鈴木晶訳『「死ぬ瞬間」と臨死体験 』読売新聞社 1997