タミルナードゥ州ビルドゥール村:農夫のジャイン

農夫のジャイン

ビルドゥールは村自体が古いジャインコミュニティであり、現在でも100戸ほどの農家が存在している。

日本人を見たことがないらしく、私の姿を見たときにはまるで宇宙人にでも遭遇したかのような驚きようであったが、「ワナッカム!」と挨拶したらやっと笑みを見せてくれた。こんなときは子どもたちのほうがすぐ慣れるものである。

 およそ700年前に建立されたという村内の寺院内には、壁一面に宇宙論などの説明や図像などが描かれており、一種の教育機関としても機能していた。

 ジャイナ教の教えによれば、農業は昆虫類を殺生するおそれがあるので避けるべき職業とされているが、カルグマライにあるレリーフ(8世紀パーンディア王朝)の寄進者リストにもあるとおり、タミル州では昔から商人よりも耕作者、鍛冶屋、陶工、大工のジャイナが多かったようである。

(撮影:奈良 仁、1994)