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ビハール州パラスナート:アメリカとムンバイからの巡礼者

アメリカとムンバイからの巡礼者

 空衣派の聖地パラスナートヒルでの滞在は、本当に過酷なものであった。ノミと蚊だらけの巡礼宿に泊まり、日中は土砂降りの中、メシも食わず山道をひたすら歩き続けた。

 そんな孤独な日本人を何かと助けてくれたのが、写真の紳士である。彼はボンベイからの巡礼者で、セキュリティーシステム販売会社を経営しているプラサド・ジャインさん親子(写真はお父さん)。隣の少女はアメリカから来たということであった。

 ボンベイなんていう大都会から、インドで一番貧しいといわれるビハール州に来ると、日本人でなくても田舎だと感じるのだろう。「電灯もない、水道もない」と、彼は愛想を尽かしたようにつぶやいた。ぼくのバックパックに目をとめると、「日本から、たったこれだけ? なんとまあ」と言って呆れかえっている。

 そういう自分たちは、ほとんど飲まず食わずで山道をスイスイ登っていく。ボンベイの人はタフである。

 しかし、どうしてジャイナの聖地はみな山の上にあるのか。これは愛ゆえの意地悪というヤツであろうか。

「しんどいねえ、パーリーターナーのほうがずっと楽だったよ」

「そうかなあ。あっちのほうがキツかったじゃないか、父さん」

 ボンベイ親子の会話を聞いて、カンベンしてよー、といいたくなった。パーリーターナーというのは、これから行こうとしていた巡礼地だったからだ。

 ジャイナは食事制限が厳しいのでめったに外食をしない。彼らもはるばるボンベイから食料を持参していた。すでにカパカパになったチャパティ(インド式のパン)を勧められて、彼らがリッチな理由がなんとなくわかった気がした。

(撮影:奈良 仁、1994)