シュラバナベルゴラ :空衣派の僧侶

空衣派の僧侶

この写真の僧侶は、ジャインマートきってのインテリ僧で、みなには教授と呼ばれていた。ちょうどYMOにおける坂本龍一と考えていただければよい。

プラクリットの文法にかけては右に出るものなし、だそうだが、見ての通りマッチョでしかもハンサムである。一日一食(しかもヤシの実一個)でなんであれだけのガタイを維持できるのか不思議であった。

この写真からもおわかりのように、僧侶たちの部屋はいたって簡素なものである。ちゃぶ台なみの小さな机に、スノコのようなしき板。経典をつめこんだ木枠の本棚。天井からは、ハダカ電球が貧相な光をそそいでいる。みな無骨で粗末なたたずまいのものばかりであった。ジャイナの高僧たちは、ここで寝起きし、ここで経を読み、ここで瞑想にふける。ここが彼らの全世界なのである。

「冷えこむときは、これを敷いて寝るのである」と指さす方向にあるのは、壁にたてかけられた、これまた汚いござの束。まだ新聞紙を重ねるほうが暖かそうだ。これが禁欲をもって鳴るジャイナ道の厳しさなのか。

僧侶のなかには、妻を捨ててまで出家したという人もいた。それでも奥さんは、身のまわりの世話をするため日参する。夫婦という関係から、修行者と帰依者という関係への変化。男女のつきあい方には、いろんなカタチがあるものだ。

「結婚しているの? 結婚はやめといたほうがいい。自由でいたいなら結婚などしないこと。結婚(マリッジ)は束縛(ボンデッジ)だから」

(撮影:奈良 仁、1994)