Patrick Vianにつづいて今回もEGGレコードをとりあげたい。
Vangelisといえば言わずとしれた映画音楽の巨匠である。「炎のランナー」「ブレードランナー」などの超有名作をあげるまでもないが、70年代前半、彼がまだフランスで活動していたころからすでにサントラをよく手がけている。
「Ignacio 」はもともとFrancois Reichenbach監督の映画「Entends-tu les Chiens Aboyer?」(1975)のサウンド・トラック盤として同年リリースされていたもので、ぼくがもっているのは独Bellaphon盤「Can You Hear the Dogs Barking?」のみである。詳細は以下のサイトを参照してほしい。
1975年といえば、あの「天国と地獄 」がリリースされた記念すべき年だ。「Ignacio」はちょうどその前作にあたり、この仕事を最後に彼はフランスを去り、ロンドンに自ら設立したスタジオ「NEMO」に活動の拠点を移すことになる。
本作はRCAやPolydorといった大手からのリリースではなかったこともあり、彼の作品にあってはわりと陰になりがちなのであるが、内容はまさにVangelisらしい、雄大さと緊張感が味わえるものになっている。善と悪、陰と陽、アポロンとディオニソスといったコントラストが基調になっているという点では、「天国と地獄」の世界につうじるものだ。
とくにB面の流れがすばらしい。ダーティな、俗っぽいブルース・シンセ・ロックからいきなり打楽器群の厳しい音響が鳴りわたり、一変して緊迫した静寂が支配する。
アトリウム・ムジケー古楽合奏団のグレゴリオ・パニアグワが「古代ギリシャの音楽 」で採用していた「アナクルーシスとしての響きの爆発」を思いだした。ラストは哀愁あるキャッチーなメロがただようお得意のパターンで幕を閉じる。
Vangelisはいかにも西洋音楽的な、クラシカルな作曲にたけているいっぽう、OSANNAの「PALEPOLI 」にも通じるディオニソス的乱痴気騒ぎというか、破天荒な展開も得意としており、天才ではなく鬼才と評されることが多いのもそのせいだとおもう。
とくにAphrodite's Child時代の「666 (1970)」、ソロの「Dragon(1971)」、「Earth (1973)」、本作そして「天国と地獄(1975)」まではアコースティックが多用されているぶん、この音響にたいする本能が際だっているようにおもう。
Vangelisの70年代ものはほとんど300〜500円のエサ箱でみつけた。コーヒー一杯分の値段でこれだけ感動できる音楽家は他にないであろう。(奈良)
第1面
イグナチオ パート・1
Entends-tu les Chiens Aboyer?(21:32)
第2面
イグナチオ パート・2
Entends-tu les Chiens Aboyer?(18:29)


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