Hourglass
おもえば9年まえ、新星堂の試聴コーナーで出会い、速攻でレジにかけこんだのがコレ。70年代のソウル・ミュージックを思わせる、アナログ感全開の「いつかきっと」をはじめ、東子さんの持ち味が一気に花開いたアルバムです。
はじめて聴いたとき、貫禄ある堂々とした歌いっぷりから、下積みの長い実力派シンガーなんだろうなと思っていたら(ジャケも大人っぽいし)、とっても若いのにおどろいた。この器のデカさはユーミンを彷彿とさせる。
プロデュース陣には、オリジナル・ラヴでベースを弾いていた小松秀行さんとマーヴィン・ゲイのアルバムでドラムを叩いていたジェイムス・ギャドソンをむかえ、前にもいったとおり70年代ぽい人力サウンドが満載。フェンダー・ローズやハモンドB3、ムーグやプロフェット5と、キーボード類もヴィンテージものがズラリで、わしらの年代にはたまりません。小松さんのベースもよく動いてくれて、これまたソウル・ファンク・AOR好きにはたまらんです。
ほかにもデヴィット・T・ウォーカーをはじめLA勢がしっかりサポートしておりますが、日本勢のミュージシャンのほうがハジけてる感じがする。バンドの音です。
小松プロデュースの3枚はどれも甲乙つけがたいけれど、アレンジに余裕というか、風格さえ感じられる「魔法の手 」が個人的にはいちばん好き。音の録りもナチュラルで、アコースティックで、いい具合に力の抜けたところがいい。「くちづけを待ってる」は飽きのこない名曲です。むかし青山一丁目のドトールで、仕事に疲れたときよく聴いてました。「恋 」も名曲てんこ盛りで、捨て曲がなく、アルバム・オリエンテッドな仕上がりです。
これ以降のアルバムになると、小松さんが離れた関係かしりませんが、アレンジが平坦になって、いまひとつ物足りない。やっぱりこの人には打ち込み系よりも人力系がマッチしていると思うんだけど。もういちど小松さんとタッグでやってほしいなあ。
東子さんの歌詞はとてもわかりやすくて、変にきどったり斜にかまえたりするでもなく、恋する女のせつない胸の内を静かに、でも力強く伝えています。
カラオケでも「歌いてー」とかいつも思うんだけど、ついつい他人の目を気にしてしまっていまだ未遂に終わっている。いつかきっと...
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