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「デザイナー色を好む」第一回

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パウル・クレー Connected to stars(水彩・鉛筆・カラーボード)

前回の「デザインはデコレーションにあらず」に続いて今回も会社勤めのころ社内研修用に書いた若き日のメモをアップしておこう。当時ぼくが担当した研修は社内ウケが悪かった。このメモも用意だけして結局お蔵入りしたように記憶している。

はじめに

 色の話ということですが、おそらくレクチャのテーマとして選ばれたのは、みなさんにとって様々な要素がありすぎてとっつきにくく、ついつい考えるのがおっくうになるようなテーマだからだと思います。今回のレクチャのために私も一生懸命勉強してみましたが、確かに複雑で、はっきりいってもう途方にくれてしまいました。というわけで、限られた時間でできるのは、色についてみなさんが考えていくためのきっかけか、ヒントを与えるのみになってしまうと思います。後はみなさんが自分なりのやり方で色彩の世界を探求してみてください。

個人的感覚を超えた色

さて、みなさんがチラシ・雑誌などの色彩を考える場合、どのような方法で決定しているでしょう。自分の服やなんかなら、自分の好きな色で問題ないわけですから、トップワンツーリスト(注:社員旅行を担当していた旅行会社)のお兄ちゃんのようにすごいカラーコーディネートでもOKなわけですが、問題は他人のものを他人のために色彩を考えるときです。この場合は自分さえ良ければそれでよい、というわけにはいきません。自分の個人的感覚を超えた、より広い見地にねざした判断の拠りどころが必要になってきます。

 

よくデザイナーの決める色はそのデザイナーの趣味だと勘違いしている人がいますが(現にそういう人もおりますが)、とんでもない間違いです。自分の感覚に頼る以外にも、配色を決定する方法はたくさんあります。逆にありすぎて困るので、その中から選択する場面で、初めてデザイナーそれぞれの個性がでるのです。これを好みとはいいません。

 色彩を決める際の思想として、まず科学的な考え方、心理的な考え方、文化的な考え方、流行、民俗、もしくはこれ以外の考え方などいろいろです。全てをくわしく説明することはできませんが、紹介はすることはできるでしょう。

色彩言語

 色というのも言葉と一緒で、その状況を適確に表現する一手段という点では、言語といっていいと思います。配色というのは、色という言葉を組み合わせ、あらゆる対象を語るということであります。色を語るためには、色を読むこともできなくてはなりません。まず最初は、色を読むことから初めてみましょう。これができるようになれば、帰りの電車のなかでいつも見ている中吊り広告がさらに面白くなりますし、デザイナーがどのような意図でこの色を選んだのか、まるで文章を吟味するような感じで考える事ができるようになります。同時に、色を書く(配色する)ことも容易になっていくということです。

色の枕詞、色の単語、色の熟語、色の慣用句

何色使うべきか?

「平面もしくは球面上の地図は必ず4色で塗り分けられるか?」は100年以上にわたって未解決の問題であったが、1976年夏、イリノイ大学のアッペルとハーケンは4色で塗り分けられることができることをコンピュータを使って証明した(四色定理)。

 

我々もフルカラーの原稿を制作する際、色数をどれだけ使用するかでけっこう考えこんでしまいます。この四定理からわかることは、レイアウトにおいて色で素材を区別する際も4色あればどんな複雑なものでも色わけすることが可能だということです。一般には、スミと紙の色(白)とあと2色あれば事足ります。逆に慣れてきますと、色を多用することにさほど興味を覚えなくなり、むしろ素材(写真・イラスト)の色を生かすよう、むしろバックはひかえめにするようになります。

これは料理においても、新鮮な素材が手に入れば、調理はむしろシンプルなほうが、素材のもつ旨味をいかすことができるのと本質的に同じです。アップル社の広告はすべてシンプルで逆にセンスの良さを感じます。逆に、レイアウトでも料理でも、素材が悪いときに調味料や色を多用せざるをえなくなるわけです。(つづく)

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