朝4時。ユニクロのフリースをはおり1Fの自販機コーナーでメグミルクを買う。8F食堂にはまだカギがかかっていた。
朝5時半。仙台の友人からもらった紅茶ガネッシュのアッサムティーにシナモンをちょっとたらして暖まる。テレビをつけてATOK Padに文字をひたすら書き殴る。
十日間の抗ガン剤治療を終え、十日ぶりにお風呂に入ってひさしぶりに長い息をはいた。肩口から入っている点滴になるべくお湯をかけないように案配しながら、風呂桶いっぱいにお湯を満たして少ない割当時間いっぱいを湯船ですごした。
抗ガン剤は終わった後の10日間が副作用もでやすくいちばんの踏ん張りどころだからまだまだぬか喜びには違いないのだけれど、体の中に毎日毒を盛られているという生理的な悪感がなくなるだけでもさっぱどする。
昨日は前日の寝不足がたたって日がなフラフラ過ごしていたが、抗ガン剤、抗生剤、赤血球、血小板と栄養剤の点滴をこなして午後2時半から1階のリハビリテーション科におりて金属加工をやらせてもらった。担当のO先生はぼくの工作好きをよく理解してくれていて、半田付けや金属加工など病棟では絶対できないことを作業療法という大義名分をもってやらせてくれるのだ。
みなさんはあまりご存じないかもしれないが、リハビリテーション科のなかに足を踏み入れるとそこはDIYセンターかとみまがうほど工具設備が充実していて、そこかしこに木材の香りがただよっている。ドトールだけでなく、ここにも脱病院化の可能性が広がっているのだ。
作業療法というといかにも機能回復のための専門的指導を想像されるかもしれないが、要するに誰もが日常やっている動作を地道に繰り返すことが基本になっている。手芸、料理、整理整頓、木工などなど、自分がやりたいと思うことを通じて手足を動かしいくことで、本人の「もういちど」という心を動かしていくリハビリといってもよい。
それがぼくの場合は工作だというわけだ。
実は先日頂戴したばかりのブナコスピーカーの音にどうしても納得できず、はやくも改造のアイデアがもやもやしている。そのためにはまずスピーカーユニット背面の鉄に穴開け、ねじ切りをしなくてはならない。とはいっても入院中の身では材料の買い出しすらおぼつかない。さてどうしたものか。そこでハッとひらめいたのが前回お世話になったリハビリ科だったのだ。
実は前回「何か木工をやろう」というところまで話は進んでいたのだが、その後ぼくが退院してしまったので話は立ち消えになったままになっていた。たしかあのときは簡単なボックスをつくって院内の「がんサロン」にCD整理用としてプレゼントしようなんて話もあった。
入院してるから何も好きなことができないと腐ってばかりいないで、ここは患者ひとりひとりが頭をつかって自分がやりたいことを病院側にも受け入れ可能なかたちにデザインし、交渉していく。社会的には何の価値も利益も生まないかもしれない。しかしこれもニンゲンらしい創造行為といえないだろうか。
第一回目。PC用アクティブスピーカーを分解してアンプの部分だけ抜き出し、300円で買った小さなデジタルアンプの基盤を移植してみた。出力が3Wなので音はかなり小さいが、とても繊細ですっきりした音がでた。テレビやラジオを聞くのにいいなと思った。
よくアマゾンなどであつかっているPC用スピーカーは安いし立体成型のユニークな形のものが多いので、どれも買いたくなってしまうが、いざ買ってみるとやはり値段相応の音がする。分解するとたいていは中国製の残念なアンプが仕込まれている。ここを取り替えるだけで高音質化できることがわかった。
USBの5Vで動くので、もちろんPCにつなげたっていいし、eneloopのモバイルブースターにつなげばモバイル環境でも音が出せる。作っている時間よりも利用場面やそれに適したデザインを考えるのがまた楽しい。
昨晩はよく寝た。今日は外泊許可がでのたで家に戻って素麺に卵かけて食いたい。なぜか無性に漆黒の空間で宇宙船が意味もなく大爆発する絵がみたくなった。とちゅうゲオによってまだ見てないスターウォーズ・クローンウォーズ・サードシーズンを借りまくりたい。
いとこからのコメントがきっかけでヴィクトールフランクルを読みたくなった。家にもどったらちょっと重いけど書棚をあさってみようとおもう。
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