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デザイナー色を好む 第四回

パソコンがなかったころ

近ごろはパソコンで簡単に色をつくって試すことができるので、ずいぶん楽にはなりました。私がこの仕事を始めたころは、まだパソコンなど職場にはなく、色鉛筆で塗ったり、カラーシートを貼ったりして色身を確認していたものです。色校があがってくるまで心配で気が気でなく(これは今でも変わりませんが)、頭の中で何度も想像しては、色の再現をしていました。逆に、想像どおりの色が形になったときの喜びというものは、この仕事ならではのものです。それだけ普段は想像どおりにいかないからでもありますが。

配色辞典を利用する

色をつくるのはできなくても、色を選ぶのはそんなに難しくありません。これは比較するものがあるからで、そんなときに配色辞典をよく利用します。ここには文化、感情、季節など、さまざまなキーワードでカラーセットが収められていて、またCMYKの値も併記されているので、そのまま印刷物に利用できるたいへん便利なものです。

これを見ると、同じ色でも組み合わせによってまったく表情が変わるというか、違う色にさえ思えてくるから不思議です。これは前後の文脈によって同じ単語でも意味がさまざまに変化するのと似ています。ただし、色は面積によって変化する(広いほど明度が上がる)ので、注意が必要です。これは網膜に色彩が入る角度と関係があるそうです。

追記:WEBデザインではAdobe kulerがちょうど配色辞典やシミュレータとして利用できる。

写真からカラーパレットをつくる

配色に迷ったら、自分がいいなとおもう写真やイラスト素材からカラーパレットをつくってみるのもよいでしょう(私はまずやりませんが)。イラストレーターのフィルタ「モザイク」をつかえば、写真を簡単にカラーパレットに置き換えることができます。そこから「カラー反転」して補色を作ったり、「濃度減少」「濃度増加」で文字がのったときの加読性を調整するのもよいでしょう。

ウイリアム・モリスの配色

blackth_m.jpg

個人的には目立つ色よりも飽きのこない色を追求いてきたので、私のデザインするものは地味な印象のものが多いと感じるのではないでしょうか。消費されない色を求めています。先日、ウイリアム・モリスを見てきて大変参考になりました。低彩度の目立たない色を多用しているのには感心しました。モリスは室内デザインを多く手掛けていますが、生活とともにある色彩と、刺激を求めるとか目立つための配色とはやはり区別すべきでしょう。

自然こそ色彩の教師

ぼくの好きな哲学者ヴィトゲンシュタインに、「他人ではなく、自然を君の導きの星とせよ」という言葉があります。印刷物を多読することでも色の読み書きはできるようにはなるでしょうが、自然が語りかける色のボキャブラリーの多彩さにはかないっこありません。音楽 、心の色など、目にみえない世界にも色彩感があります。こうしてみれば、色彩とは世界そのものですし、仏教ではまさにそのような意味で「色」(色即是空)を使用してきました。

みなさんもぜひ、たまにはオフィスを抜け出して大自然の色を学んでみてください。(おわり)

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