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ガンとの同棲生活

大学病院に入院したのが今月7日。いつから次の治療が始まるのかなと内心落ち着かない毎日を過ごしてきたが、どうも8月いっぱいはこのまま何もせず終わりそうである。というのも、当初は倍々で増えるだろうと予想された白血球の数がなぜか3〜4万代で頭打ちになって止まったからである。

入院したてのころ医師から「白血病はとても進行が速い病気なので、もしこのまま倍々で数値が上昇するともって三週間」みたいなことを言われ内心かなりビビっていたが、いざ蓋を開けてみると今日でちょうど三週間なのに死ぬどころかこうしてブログを書いている。医師の伝える余命宣告など百害あって一利なしであって、こんなものはどの病院でもやめてしまえばいいのにといつもおもう。

しかしなんでこんな不思議なことがおきるのかというと、おそらく自分のなかの自然治癒力、つまり免疫細胞ががんばってくれているのではないかという話である。ベスタチンという抗腫瘍効果のある漢方薬も効いているのかもしれない。だから良い細胞が、悪い細胞の増殖をおさえようとしてがんばっている間は、むしろ無治療でいけるところまでいって、その間にごはんを食べたりリハビリして体力をつけておこうという段取りになりそうである。

ちかごろ「がんは治療するな」とか、その手の本が売れている。「放置療法」という言葉すらあるほどである。かいつまんでいえば、がんと闘わず、むしろ共存していこう、そのほうが痛まず苦しまず自然な最後を迎えることができるよということらしい。

しかしこれはあくまで固形ガンなどのばあいの話であって、白血病のばあいはさすがに放置はまずいだろうと思っていたら、自分の身にもそれに近いことが起こったことでガンにたいする見方が県病にいたころとは180度変わった。

これまでは、もしちょっとでも腫瘍細胞が残っているならば、抗ガン剤で徹底的に叩くしか生きる方法はないと信じこんでいたというか、そう洗脳されてきたのだが、別に完治しなくても、白血病という病と共存しながら生きていくという道もあるのだなと。実際に治療を続けながら仕事もしているという方もおられるというし、県病みたいに何でもかんでも移植にもっていこうとする強迫的なムードが逆に怖くなってきたほどだ。これも弘前に帰ってはじめて気がついたことである。

がん細胞にとっても、もし宿主が死んでしまったら自分も死ぬわけだから、狭い長屋住まいといっしょで、不自由ながらもおたがいさまでというか、まあまあいいじゃないかとケンカを上手にさけるのが賢いというものである。

中医学に「従病」という言葉がある。ガンだからといってやみくもに敵視せず、自分の隣人だと考え相手の居場所を奪わないという心もちになることができれば、ガンのほうでもそれなりに身の丈というものをわきまえてくれるのではないだろうか。

これはぼくたちの生きる社会にも通じることで、もし自分にとって都合の悪いものは徹底的に排除することを良しとしてしまうなら、それこそヒトラーのやったことと同じことになってしまう。

ちょっと視点を変えて、もし地球がひとつの生命体で、地球にとっての人類がガン細胞のような存在であるとするならば(実際そうとしか思えないほど悪さをしているわけだが)、それでも地球は人類を生かしてくれているという気づきにたどりつくだろう。

もしガンという病から何か学びとることがあるとすれば、畢竟それは「敵との共生」であり、キューブラー・ロス風にいえば「自分のなかのヒトラーを殺せ」ということではないだろうか。

柳原和子さんは前に「がん患者は新しき人々なんだ。成長した人々なんだ」と語っていたが、もしガンという生命体を敵視するだけで、断固として闘うという態度をゆずらないならば、それはニンゲンとして成長したとはいえないであろう。

共存を学びとるために地球という生命体が派遣した「学び病」としてのガンという不思議さを考える。

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