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亡姉と亡父の天袋

父と姉の遺した書きものをヒマをみつけて整理している。二人とも数がとにかく多い。段ボール箱に詰まった日記やメモのたぐいを天袋から下ろすだけでも腰が痛む。姉のものにいたってはまだ全体すらわからない。前橋のアパートにもそのまま手つかずであるはずだから、そのうち寝台特急にでも乗って引き取りにいこうと思っている。

整理して読み、読んでは整理して、父や姉のことを思いだしては泣いたり笑ったりである。父はとにかく几帳面を絵に描いたような人だったから、書き殴りというものがない。日記も清書したのかと見まがうような読みやすさである。

一方、姉のものは明らかに酔っぱらって正体をなくしたヒトが書いたものである。とにかく字が汚い。酒に生き、酒で逝ったヒトではあったが、小さなメモの一枚まで捨てられずとっておく性癖は、まさに父の子としかいいようがない。

このブログでも紹介した亡父ノートは中年層の心に訴えるものがなにがしかあったようだ。「フォーティーズ・クライシス」や「パッセージ」など人生の先輩達が説いてきたいわゆる「40代の危機」というものは、古今東西を問わず誰にも訪れるものらしい。

科学的、統計学的にはまったく根拠のない説であるとはいわれるが、ぼくも含めて40代前半というものは、厄年でなくても価値観や人生観というものが地殻変動を起こさんとする予震の時期ではないかとおもう。

古代インドのマヌ法典に「四住期」という説がある。

  1. 学生期(学業にいそしむ時期)
  2. 家住期(家業にいそしむ時期)
  3. 林棲期(家督を後継にゆずり徐々に隠居隠棲していく時期)
  4. 遊行期(住処をもたず乞食遊行する時期)

それぞれとくに決まった年数を定めてはいないが、人生80年とすればおよそ20年単位ということになる。つまり、40代前半はちょうど家住期から林棲期へ、家業から隠棲へと移りゆくターニングポイントということになるであろう。もちろん、労苦や災難により、30代に経験する人もいれば、多幸に恵まれ50代、60代、もしくは70代になってから迎えるヒトも当然いるであろう。

それまでの世俗的な価値観、つまり家族のために働き、社会的な地位を求め、財産を築きあげるのが家住期であるならば、林棲期はむしろそれらをあえて放り出していく時期であるともいえる。世俗の価値でカチカチに固まった自分の解体作業に立ち会うことになるのである。

自分という価値を思いきってゴミ箱に放り出せというのだから、この作業には多くの痛み、疑念、不安、苦悩がともなうであろう。しかし、古代神話の数々が伝えているように、全的に復活するためには、まず全的に死にきることが絶対条件だ。だから新しい自分を生きるためには、まず死にきるしかない。それが四住期それぞれのパッセージ(過渡期)に起こるカオスであろう。

もうすぐ姉と父の歳を追い越す。二人がついぞ臨めなかった45歳からの風景というものを、三人分まとめて味わってやろうとおもっている

独り言を書いていたら長くなってしまった。父や姉の思い出話はまた次にゆずろう。そのうち姉からの手紙「さぼてんのそだてかた 楽しいサボテンライフのすすめ」を抜き書きしようとおもっている

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