- するべきことがあり
- いるべき場所があり
- 認めてくれる人がいる
父が病床にあったころ、よくこの三つを説いていたと母からきいたことがある。おそらく父のお気に入りだったこの三箇条は、その後ぼくの耳にも長く留まることになった。いくら仕事をこなしても虚しさしか残らないようなとき、これは本当に自分のするべきことであろうかと疑念にとりつかれたとき、この三箇条に照合しては自問自答を繰り返していた記憶がある。
近ごろ父の蔵書を散策していてわかったことだが、この三箇条は父のオリジナルではなく、まえに紹介した小川俊一著「40歳・男の設計図 知的職人のすすめ 」(P186)が原典であることをつきとめた。抜き書きの量からして父が病床でもっとも精読した書物であることは間違いない。
今回は「亡父ノート5 男の設計図1」の続編である。
環境の変化は種の多様化を促進する
- しのびよる新しい環境に再適応するタイプ
- 古いが、まだ残っている気楽な環境を探して一(イーファン)おりるタイプ
- 変化にふりまわされてしまうタイプ
40代の三本柱
- 巣づくり(家族、マイホーム、健康)
- 職づくり(職業、職場、職能)
- 題づくり(ライフテーマ=天職)
※括弧内は引用者による補足
自分の来し方をみつめる(自分の位置発見)
自分の老後生活のイメージ(老生像を)心の中に生き生きと描くことは、人生の折り返し点で、自分の能力を鮮明化するための第一条件である。
ライフテーマ発見の3原則
- 1 旗を立てよ
-
自分の心が向いている方向を示すものこそが"旗"
自分の理想・自分の内的な人生目標を決める。テーマの樹立、ターゲットの設定 - 2 人のために何ができるか
-
どうしたら人に奉仕できるか
40歳以後の職業選択は、社会のニーズなくして成立しえない - 3 自分の足下を掘れ
-
「果実は種子なり」。どんな方面で生きるにせよ、可能性の種子は人生前半を生きた、あなた自身の肉体と足跡の中にひそんでいる
- 自分の周辺からはじめよ
- 身近にあるものを利用せよ
- 大きな仕事をする人は、いずれも身近なチャンスと特権を最大限に利用する人である
40歳からの再出発・手がかり
- 観点の手がかり(多角的視点)
- 知的テクノロジーの手がかり(情報技術の総点検)
- 人間関係の手がかり(ニンゲンを触媒する現場)
※括弧内は引用者による補足
「人生情報」を処理するノウハウ
現場で使える具体的事例をもった「 」(空欄になっている)を身につけよ(どんな職場で自分を生かすにしても)
生きがいとはつまり、「生き場」(ライフステージ)をもつということであろう。これについては本書の中に面白い事例が紹介されている(P185)のでご一読をおすすめする。
古典=現代書
父の蔵書を読みあさり必ず思うことがある。どれも三十年以上前の書物でありながら、内容がまったく古びていないということだ。
ちかごろ流行のドラッカーにしても、父のさらに前の世代から読み継がれてきたものである。ビジネス書のコーナーを眺めても、カーネギーの「道は開ける 」(1944年 How to Stop Worrying and Start Living)、ナポレオン・ヒルの「思考は現実化する 」(1928年 The Think and Grow Rich Action Pack)が当たり前のように置かれているし、外山滋比古の「思考の整理学 」(1983年)などは最近のほうがむしろ売れているらしい。福沢諭吉の「学問のすすめ 」(1872年)にもいえることだが、むしろ百年先の現代人にむけて書き記したのではないかと思えるほどの今日性に満ちている。残念ながらニンゲンはさほど変わっていないということであろう
パソコンもケータイもなかった時代に書かれた「40歳・男の設計図 知的職人のすすめ 」が、いまだにぼくの知的興奮を誘うということ自体がそれをよく物語っている。
父の遺したカードそれ自体が今こそ読まれることを望んでいるのかもしれない。
コメントする