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トントントンと、東京に行けず

シックスアパートさんから授賞式のお知らせが届いた。体調をみて出席したい旨を伝え、切符や身支度のことで気ぜわしくしていたのだが、フトンに入ったらなぜか「行かない」決心がハッキリとついた。

東京にいけば旧友に会える。レコ屋めぐりもできる。入院中励ましてくれた当時のクライアントにもお礼参りできる。しかし免疫抑制剤をたらふく飲んでるニンゲンがいきなり渋谷ではインフルの海に身投げするようなものである。往復の新幹線や宿代で懐が真冬日になるのもつらい。お詫びとして賞品でもらったiPadからお礼のメールをした。出席すればまた新たな出会いもあったかと思うと後悔がないわけではない。しかし春の恒例行事となった「サイニューイン」だけはやりたくないのだ。

一昨年は生活復帰、昨年は社会復帰、今年の目標はすばり「仕事復帰」。年始の挨拶に「旧年中はおかげさまで社会復帰うんぬん」と書いたら叔父から「就職決まったのか?」と賀状に書いてあった。なるほど世間一般では社会復帰というと復職あるいは就職をいうらしい。

しかし、わしのはそんなリッパなものではない。単に巣ごもりしていた手負いの鳥が、群れに舞い戻ったというだけのことである。そんなことはわかっているが世界にむかって鳴きたかったのだ。寝たきり垂れ流し、人工呼吸器のアイツが自分の翼で飛び立ったと。

年老いた親鳥にエサをわけてもらってはいるが、アンテナ修理もすれば、雪下ろしもする。2階に灯油タンクを運んだりもする。もちろん世間でいうところの社会復帰はまだまだこれからであろう。やりたい仕事に体が応えてくれるかどうか。まずは健康健康...とiPadを叩きながらおもう。

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