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自分は何の虫であるか

地震があってからどうも心の置き所がないというか、いつも何かに追い立てられているような焦燥感みたいなものがとれない。食べていても寝ていても、なにか罪悪でもしているかのような気兼ねがついてまわる。心から楽しめないのだ。

だからといって部屋で横になってばかりもいられずと新たに講師の仕事に手を染めてはみたが、人に会う機会が増える→感染→サイニューインと、去年と同じ轍をたった一週間でふんずけてしまった。

インフルエンザ+GVHDということで県病から弘前病院に移され、個室で高熱にうなされながら考えた。「やっぱ人の多い場所はまだ無理だった」と。「これが現実なんだ」と。水を一口飲むにも顔を歪めているヤツが、人前で話す仕事など最初から無理なことなど推して知るべしであった。

でもこれでキッパリあきらめがついたというか、やはり家でできる仕事一本に絞ろうと腹をくくった。講師の仕事でお世話になった方には、身の上を話して正直に詫びた。

それから昔のツテを頼って「自分にもできる仕事ないか」と打診してみた。よく考えてみたら最初からこうするべきだったのだ。

今の自分にできること。それはデザインだ。やはり今までずっとやってきたことだけだ。それしかできないのだ。今年はもう骨髄バンクのボランティアやらボサノバやらもバッサリとあきらめて、仕事一本でいこう。とにかくデザインをたくさんやったといえる年になればそれでいい。それが儲かるかどうかなんでどうでもいいのだ。自分がいちばん生き生きしてる瞬間、それはたこ焼きを焼いているときかデザインしているときなんだから。

ちょうどこのブログを作っていた2年前を考えてみる。朝起きて、玄米パンをストーブで焼いて、コーヒー入れて、2階にあがって黙々とデザインして、昼になったら庭からパセリとってきてパスタつくって、眠くなってきたところで小屋から自転車をだして西へ走る。お金があるときは野市里で岩木山を眺望しつつ嶽きみアイスとコーヒーをオーダーする。晩ご飯は黒米飯、タラの味噌焼、納豆、卵焼き、味海苔、しじみ汁など。旅館の朝食のような献立にして洗い物を減らす。

母と天気予報を見ながらどうでもいい話をし、話題が切れたところで二階にあがってジョアン・ジルベルトを練習する。Twitterをチェックして寝しなにヒルティを読む。Ash Ra Templeの「Join Inn」B面が終わるころには口をぱっかりと開けて動かなくなっているだろう。

飲みに行ったり、イベントやお茶会などもいっさいナシだ。宮澤賢治のいう「デクノボウ」のような一年をデザインしてみる。

なまじ人並みの暮らしだとか、お金にこだわるからダメなのだ。今の自分にできることではないのだ。今はただ虫のようにただひたすら自分にもできる単機能な生を求めることだ。

自分はどんな習性の虫であるのか。感染しやすく、口の痛い虫であることはよくわかった。この小さな虫の本能は何を欲してるのか。まずは触覚を動かしてみようとおもう

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