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亡父ノート4 人生計画

父のカード箱は仕切用の色つきカードで区分けされている。「ライフワーク」とか「考えるネタ・書くネタ」とか、ぜんぶで五十ほど見出しがついている。几帳面だった父の性癖がそのままラベル化した印象である。

「人生計画」の仕切りに目をやると十数枚ほど納まっている。これを仕切りごと引き抜き、ガストでカプチーノを啜りながら味読するということをやっている。

これまでブログに抜き書きした亡父カードは、父が蔵書から抜き書きしたものばかりで、もとは井上富雄さんら他人の書きものであったが、「人生計画」の項はすべて父のペンによるものらしい。何回かにわけて抜き書きしておこうとおもう。

人生計画

今次の入院は天の配剤である。
折り返し点において、長年の心身の疲労をとり、オーバーホールする
後半生への心身の基盤(バネ)を準備する

生活態度について

とにかく積極的な"動き"をすることだ
うじうじした優柔不断で考え込んだり、思い込んだりしないことだ
覚えた事は行為に結びつけ、表すことだ
積極的な動きの姿勢から自ずと道は開け、建設的な循環が始まる
目の前が開けるのだ
決して、決して「今からでも遅くない

昭和53年4月30日とあるから、父43歳のメモであろう。「決して、決して 今からでもおそくない」と書いた二年後、父は陽の出とともに逝ってしまった。驚いたのは、まるで自分の手帳を見返したような既視感に襲われたことだ。自分が日々考えていることそのものなのだ。

何かしようと思ったら、それをしやすいような環境を作り出し、その環境に身をおくこと--これは重要な"動機づけ"の原理である

カードそのものは二十のころより手元にあったから、存外すでに読んでいて、自分の言葉だとばかり信じこんでいたのかもしれぬ。それを何かにつけて手帳に書きつけて励みにしていたのかもしれぬ。純粋に自分の考えなど、実に怪しいものだと気づく。

しかし次のカードには、意外にも気弱な父の姿が存在していた。

人生計画に関する反省(現状)

考えてみると、私のこれまでの人生には「計画」したものは何もなかった
職業選択はままならなかったとして
仕事のキャリア、蓄財、家、どれ一つにしても、計画し獲得したものはない。

つまりは、夢と自己主張がなく、受身で環境の流れに、持前の順応力で適応したに過ぎない。(忠誠心、生真面目、器用さ、責任感)

計画し、実現ないし獲得したものがないから、ある程度の業績(仕事)をしながら(人から評価・信頼されながら、自分では)自信・自負を持つことが出来なかったのだ。

夢があり挑戦があり、獲得・実現・達成してこそ自信が生まれ、生きがいが感じられ存在証明となるのだ。

私の場合は、環境の変化から人生計画を修正するのではない。初めて計画するのだ

それは如何に生きるかを考えることであり、真の意味で、自己の主体性を確立することであり、存在証明を形成していくものなのだ。

「生きがい」「如何に生きるか」「存在証明」といった言葉からは、入院によって否応なしに発見せられた自己というもの、それ自体と向き合わざるをえなくなった父の姿を見てとれぬこともない。しかし哲学者めいた表現の連呼には、いくらか自己陶酔の感が否めない。そのあたりも自分に似ていて苦笑する。

いま、やっと父の言葉を生きているのだと思う。いや、父は今こそ生きているのだ。

心の声に耳をたてつつ、病室でひとりボールペンを走らせる父のパジャマ姿をおもう。

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